DXに対応するための思考方法 AB3C分析
DX対応の本質でも述べた通り、DXの時代には今までの時代とは違った「新しい選ばれる理由」が必要です。
その新しい選ばれる理由を検討するための思考方法がこのAB3C分析になります。
ここからはAB3C分析の手法についてご紹介します。
ぜひ自社の場合に置き換えて、DX時代に自社の選ばれる理由は何かを分析してみてください。
DX時代の「選ばれる理由」
DXの時代に対応するには新しい「選ばれる理由」が必要です。
例えば、インターネットのない時代、旅行といえば大手旅行代理店の提供する多数向けのパックツアーが主流でした。
皆さんの中にも、JTBなどの窓口に行ってパンフレットをもらって帰った方も多いと思います。
しかし今では、普通の人は誰も行かないような「石垣島カヌーフィッシングツアー」などニッチな旅行も探すことができます。(完全に私の趣味ですいません。。。)
このようにDXの時代の消費者はインターネットによって情報を手に入れ、一般的な不特定多数向けのものではなく、自らの細かいニーズや価値観に沿った商品やサービスを探します。
そして複数の選択肢を比較し、その中から最も自分にあったものを選ぶことが出来るようになりました。
つまりDXの時代に「選ばれる理由」をつくるには次の2点が重要になります。
②比較された際の好ましい違いは何か
これを図に示すと次のようになります。
お客様の求める価値はそれぞれで、万人受けする商品(多数向けのパックツアーなど)でなく、固有の価値観をもって自分だけの商品(石垣島カヌーフィッシングツアーなど)を探しています。
その際に貴社と競合(ライバル企業)とを比較し検討します。
ですから比較された際に好ましい違いを持たなくてはなりません。これが差別的優位点です。
従来、お客様(Customer)・自社(Company)・競合(Competitor)のそれぞれの頭文字をとって「3C」という分析方法がありました。
私たちはこの3Cに、差別的優位点(Advantage)・求める価値(Benefit)の2つを加え、AB3Cという分析方法を用いています。
AB3Cが成立すると「選ばれる理由」があるということになり、これを消費者に伝えることによって初めて成果につながります。
これまでの差別化といえば、例えば自動車の購入なら「岡山市の30代~40代のミニバンを買う人」というような「商品」「客層」「地域」の絞り込みなどが中心でしたが、お客様が情報を得たインターネット社会では、お客様固有の価値観によって細分化されたより細かいニーズで絞り込みその中で選ばれないといけません。
ここからはこのAB3C分析を使って、DX時代の新しい「選ばれる理由」をつくる方法をご説明します。
※AB3C分析は一般社団法人ウェブコンサルタント協会の登録商標です。
お客様が求める価値は何か
まず最初に考えないといけないのは、お客様の求める価値にはどういったものがあるかということになります。
事例として中古車販売店で、お客様の種類と求める価値を考えてみましょう。
人はなぜ車を買うのでしょうか?
車に求めている価値は、移動するということだけではないはずです。
人が求めているのは「車そのもの」でなく、得たい価値があってその手段として車を買っています。
例えば車をファッションの一部として考えている人もいます。
週末に家族でキャンプや山登りなどのアウトドアを楽しむために車を買う人もいます。
ペットと出かけるために車を買う人もいるでしょう。
これらは全て車を買う本質的な理由であり、求めている価値です。
例に挙げた週末に家族でキャンプや山登りを楽しんでいる人にとって、車を買う本当の理由は「アウトドアライフを楽しみたい」です。
このような人が中古車販売店に求めることはなんでしょうか?
まず考えられるのは、
・SUVやミニバンなどアウトドアに向いた車の情報の豊富さ
・店員さんがアウトドアライフに詳しい
などではないかと思います。
差別的優位点があるか
ではこのような価値を求めているお客様にとって、全国のライバル店と比較された際に、どういった好ましい違いを作ることができるでしょうか?
それはやはりお客様の求めている価値が出発点です。
このお客様が車を買う理由は「アウトドアライフを楽しみたい」であり、
・SUVやミニバンなどアウトドアに向いた車の情報の豊富さ
・店員さんがアウトドアライフに詳しい
などを求めているので、差別的優位点としてはこれに合ったものである必要があります。
ですから好ましい違いとしては、
・アウトドアに向いた車種を専門に展示している
・店長がアウトドアでの車の使い方について詳しくアドバイスしてくれる
・アウトドアグッズや関連カー用品の品揃えも豊富
などがあると、大変喜ばれるのではないでしょうか。
これらは他の一般的なライバル店と比べて好ましい違いであり、差別的優位点になります。
これをAB3Cの図に置き換えると下記のようになります。
一般的な中古車販売店と比べて、「選ばれる理由」のある中古車販売店ができました。
ネット競合とマネされにくさ
ですが、ご注意いただきたいのはDXの時代はインターネットの登場で商圏の垣根を越えて競合がいる ということです。
例えばアウトドアに向いた車の情報だけであれば、ネットの記事やブログなどいくらでも参考にできるものがあります。
さらにアウトドアグッズやカーグッズにも個別の専門店がありますし、アマゾンや楽天でいくらでも売っています。
そして商品の品揃えだけなら、やろうと思えば簡単にマネができてしまいますし、こういった専門店が全国チェーンでできる可能性もあります。
店長のアドバイスという差別的優位点もありますが、これだけでは少し弱くなります。
ですから最も重要なのは、もっともっとお客様の求める価値を絞り込んで、簡単にはマネのできない、オリジナル商品・オリジナルサービスをつくって「選ばれる理由」をより強固にしていくということになります。
オリジナル商品・オリジナルサービス
オリジナルの商品やサービスとはどういったものでしょうか。
メーカーであれば競合他社がマネできないようなニッチな商品をつくるのも手ですが、中小規模の店舗の場合は予算も限られていますし、在庫リスクなども心配になると思います。
そんな場合にお奨めなのは、オリジナルサービスの開発です。
例えばこの中古車販売店の場合、店長が毎週のようにオートキャンプ(車を活用したキャンプ)を楽しんでいて、人に教えるのがとても上手だとします。
それなら、ターゲットを「オートキャンプを楽しみたい初心者ファミリー」に絞り込んで、サークル活動やイベントを主催するのはどうでしょうか。
もっとアウトドアを楽しみたいけど子どもが小さくて不安という方には喜ばれそうです。
こういった体験を伴う価値の提供はネットではできませんから、実店舗を活かした強みを発揮できます。
このようにより絞り込んだマイクロ市場を発見し、そのお客様の本質的に求める価値を理解し、モノ消費ではなくコト消費という目線でオリジナルサービスを展開すれば「選ばれる理由」がより強固なものになります。
AB3C分析はDX時代の思考法
日本中の中古車販売店と比較した際に、近くにアウトドアカーライフを楽しむことのできるお店があれば、「選ばれるお店」となり、ネット検索やSNSなどを通じて、自然とお客様が集まってきます。
この様にAB3Cが成立している状態が、DXの時代に「選ばれる理由がある」ことになります。
いままでであれば展示車を多く持ち、どれだけお客様のニーズに合った車を探すことが出来るかが選ばれる理由でした。
しかしスマホひとつで全国の車を調べられるDXの時代においてはその価値は失ってしまいます。
ですから単に車を売るという価値提供ではなく、「アウトドアライフを楽しむためのお手伝い」という提供価値の再定義や、「キャンプ初心者へ安心と交流を提供する」という新しい価値の創造が必要になってきます。