代表 黒瀬直樹インタビュー02


広告代理店営業マンを経て起業した、岡山ウェブコンサルティング株式会社・黒瀬直樹代表。デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)への取り組み成功が企業の明暗を分ける中、DX支援のパートナーとしてなぜ黒瀬代表が選ばれ続けるのか。DXに精通する知識やスキルはもとより、元営業マンだからこそ芽生えた思い、挫折、克服、転身――さまざま経験に裏打ちされた強い推進力が中小企業のイノベーションとビジネスチャンス拡大を支えていた。( 聞き手:フリーライター 村上まき )

“お客さんが本当に解決したいことを解決できる人間”になりたい

今のお仕事を始められたきっかけは何ですか?

独立前は、広告会社の営業マンでした。今思えば、営業マンとしてお客さんと接する中で、常に「この人が本当に求めていることは何だろう?」と思いながら話を聞いていたのが最初のきっかけかもしれません。単に「物を売る」「買ってもらう」ことより、「お客さんが本当は何を言いたいのかを聞く」ということをすごく大事にしていました。

お客さんが本当に求めていること?

僕はお客さんに“広告の枠”を売っているけど、お客さんが欲しいのは“広告の枠”じゃない。本当に求めているのは「売り上げを上げたい」とか「集客したい」ということ。そんなふうに「お客さんが本当に求めていることは何か」というところをすごく考えるようになっていって。そしたらもう“枠を売る”だけでは、これは解決できないと思うようになりました。だったら、その「お客さんが本当に解決したいところを解決できる人間になりたい」。そう思ったんです。それを突き詰めると、広告会社ではできないと。

その思いを実現するためには独立するしかなかったわけですね。

同じ業界で転職しても今の自分が抱えるやりたいことは叶わない。でも、そうは思っていてもすぐ独立したわけじゃなく、転勤を経て、ずるずる40歳くらいまでいきました。その頃にちょうど、これまで抱えてきた思いと、世の中のデジタル化という風潮が重なって、やるなら今だと思いました。このタイミングで独立しなかったら、もうたぶん一生チャンスはないなと。

何でも思い切って行動するタイプですか?

いや、そんなことないです! 基本的には“石橋叩き”。自分で納得できるまで分析して、これなら大丈夫って思わないとできない。恐いから。家のカギは締めたかなって何回も見に行くタイプ。でも、世の中はデジタル化に向かっていたし、独立前に50社のヒアリングを重ね、ニーズは確実に高まっているという確信を得た。だから行動に移せたんだと思います。もちろん家族のバックアップも大きかったです。


黒瀬直樹インタビュー

“枠を売る”だけでは、お客様の課題は解決できない。


原因と対処法を探り当て、ゴールへの地図を示す

過去には、心身ともに体調を崩された時期もあったとか。

会社員時代に、耳の手術を3回、鼻の手術を1回しています。手術ごとに1カ月の入院生活、2カ月近くの自宅療養。毎回約3カ月どこへも行けない、引きこもり状態でした。そうすると、ゲームをしたり、漫画をよんだり…徐々に昼と夜が逆転して。お日さまにも当たらず、ずっと引きこもっていると、だんだんうつになる。そんな生活でした。復帰しても、仕事のストレスと病気療養の後遺症で、自律神経失調症に。毎日、頭痛と吐き気で薬を飲んでも治らない、調子が悪いので休む、さらに体調を崩す、この悪循環でした。

それでも復帰し営業マンとして活躍されていた――

仕事自体は好きだったし、楽しかった。でもそれ以上に、過労や過度なノルマで精神的に追い込まれていた部分がありました。今思えば、肉体的な病気と精神的な病気が重なって、相乗効果で悪くなってしまったんだと思います。のどにずっとビー玉が詰まったような感じがして、えずいたり…。あとから調べたら、ストレスの典型的な症状なんだそうです。

今の黒瀬代表からは想像もできません…回復にはきっかけがあったんですか?

これという何かがあったわけじゃないんですが、ウェブ制作の会社へ転職してじわじわ感じたのが、自分がお客さん、つまり世の中の人から求められているということと、求められたことに対して応えられたという満足感みたいなものが徐々に生まれたのがきっかけかなと思います。お客さんが知らないことを伝えられる、求めていることを提供できる喜びと、それに対して成果が出たという喜びがあって。それを繰り返していけるようになったとき、ある日突然、「あれ?あんなに悩んでいたものがなくなったぞ。頭痛もしないぞ。あれ?」と。

「本当に解決したいところを解決できる人間」に近づけたということですね。

単純に頼られることがうれしかったんだと思います。それが自分にとっての幸せなんだということにも気付きました。誰かから頼られる、社会から頼りにされる存在になるということが、実は最終的な自分の生きがいにもつながっていた。DX(デジタルトランスフォーメーション)という時代の大きな波の中で、何か考えないといけないと思ったときに、一番に思い浮かぶのは黒瀬だと、本当の意味で信頼される存在になりたいと思っています。

苦しい時期の経験は、今のお仕事への考え方にも大きく影響していますね。

病気のときは「何でこんなに喉が詰まって辛いんだろう」と答えが分からず、ずっと苦しんでいました。でも今はいろんな情報と経験を得たことで、自分の中で整理できたし、対処法も分かった。原因はストレスだと理解できている。じゃあストレスを取り除くことを冷静になってやれば大丈夫だって思える。どう行動すればいいか分かるから。

仕事も同じです。原因が分かれば、対処方法が分かる。だから解決できる。でも原因も解決方法も分からなかったら、めちゃめちゃ恐い。お客さんもゴールが見えず、正解が分からず、模索しながら、どうして売上げが上がらないんだろうと悩んでると思うんです。だからちゃんとその原因と、何をすればいいかを分析したうえで、目指すべきゴール、ゴールへの地図を示せれば、安心して進めると思うんです。それが僕の役目です。


黒瀬直樹インタビュー

苦しんだからこそわかる。自身の役割は、ゴールと地図を示し、お客様に安心して進んでもらうこと。


やりたいこと×ウェブ=お客さまの課題解決

なぜウェブコンサルタントの道を選んだのですか?

会社員時代にマーケティングを勉強するようになったとき、ちょうどインターネットが加速しはじめた時期で。マーケティングとインターネット、この二つにすごく興味を持ったんです。インターネット自体は、たぶん周りの誰よりも早く使っていたし、もともと新しいものには何でも興味をもつタイプでした。それでウェブマーケティングを独学で勉強して、売上自体はそれなりに上がっていたんですが、それでも、それはあくまでも対症療法。本質的な課題解決になっていないことに気が付いた。どうやってもこれはついて回るんだと。周りにもそういう話をしていたら、あるとき、「黒瀬さんの考えてることって、権成俊さん(現ウェブコンサルタント協会・代表理事)の言っていることとぴったりだよ」と教えてもらって。それでいろいろ調べてみると、「あ、これだ!!」と。僕が思っていたことをちゃんと体現している人が世の中にいるんだと分かって。ものすごい衝撃でした。

やりたいこととウェブがつながったんですね。

そうです。単純にインターネットを活用するということではなく、お客さんが「本質的に求めていること」「本当に解決したいこと」を見て提案しないといけないということ。インターネットができたことによって、ビジネスのやり方そのものを変えていかないといけないということ。こういう考え方をして、こう組み立てていけば、課題を解決できるというノウハウを権さんは提供してくれていました。しかも、ご自身でもちゃんと実績を出されていて。すごい人だと思いました。権さんの下で、僕自身も多くのことを学びました。

まさに黒瀬代表の目指すところですね。

そう、僕はウェブサイトをつくって提供したいわけじゃないんです。たとえば、電気店でデジカメやテレビを売っている。それを今後、お店のサイトでも売りたいと思ったところで、ネット上ではアマゾンや他の家電量販店さんがもっと安く、まったく同じ物を売っている。同じ物なら、消費者は安い方を買う。価格勝負になるのは目に見えてる。“ECサイトをつくりたいとお客さんが言ったからECサイトをつくった”だけでは、課題は解決しない。価格勝負にならず、アマゾンや他店に勝つためにはどうすればいいのか。それを考えるのが本来のウェブコンサルタントの仕事です。

僕の仕事はお客さんが本当に解決したいところを解決する――それが大前提です。依頼されたことが、本当にその人が困っていることではない可能性があるから、ちゃんと本質まで考えて提案する。これはポリシーとして必ず持っていますし、売上げなど「目に見える成果に貢献をする」というところも絶対にはずしたくないと思っています。


黒瀬直樹インタビュー

お客様の本質的な課題の解決、それが大前提です。


DX時代に、企業が花開く土壌をつくる

デジタル化で、ますます事業戦略が重要になるということですね。

インターネットの普及で消費者の消費行動そのものが大きく変わりました。企業側もそれに合わせて、今までとは違う「新しい選ばれる理由」がなければ選ばれない。どこでも売っている仕入れ商品をネットで売りたい、集客したいというのが無理な時代になった。根本的なところから考え直していかなければ商売が成り立たないんです。

誤解されがちですが、中小企業にとってのDXというのは、単にデジタル技術を自社業務に取り入れるということではありません。デジタル技術が身近になり、それを活用する消費者や競合などといった環境そのものに適応するため、自社の事業自体を見直すというイノベーションが必要なんです。デジタル社会において競合優位性があり、世の中から必要とされるサービスや商品へとシフトし、固有の価値を示していかなければ生き残れない――。

コロナ禍で、デジタル化の波はさらに加速したと思います。テレワークやネットショッピングが当たり前になった。この1年間で10年くらい進んだイメージです。デジタルが浸透し新しい環境となった今、中小企業にとってもDXは喫緊の課題となったんです。

新時代にDXは避けては通れないということですね。

DXというのは時代の大きな転換点です。世の中の変化に合わせて、会社はどんどんバージョンアップしていかないといけない時代。だからこそ、主体的に自分で会社を変えていくぞと思えるような人材、そういうパワーがあって、やる気があって、その手段もちゃんと身についている――そういうバランスのとれた人材が必要になってきます。

それに応えるのが新サービス「DX思考育成プログラム」ですね。

これはエンドユーザーと接点をもつ、会社のフロントエンドにいる人たち、実際に現場で指揮をとる人たちに向けたサービスです。これまでは、戦略を立てても遂行する人材がいないというのが、多くの企業にとって課題でした。経営者の思いを理解できる社員を育てなければならない。

さらに今後は、現場の人たちがDXや戦略を考え、感じ取って、それを会社にフィードバックすることがより重要になってきます。それが新しい時代の商品開発においてすごく大事。だからこそお客さまとのコミュニケーションの中で、どうやってお客さまのニーズをつかむのか、ニーズなのかウォンツなのか、その幅をどう捉えるのか、そういったより実践的なことを提供したい。ボトムアップ型の体制が今後の企業成長には欠かせないと考えています。

実案件の現場でのトレーニングなどもありますが、元営業マンの経験からですか?

それは「最終的な成果」にこだわりたいからです。実際にどこまで貢献できるかは分かりませんが、課題を解決するところまでいかないといけない。セミナーを聞いた人の9割以上は「いい話を聞いた」で終わるんです。ほとんどの場合、実践が伴わない。だからこそ、ある程度一緒に伴走するということが大事なんだと思うんです。現場で、その人と一緒にやりながら、学びながら、やりながらの方が本当の意味での成果につながるんじゃないかと思います。元営業マンだからこそ、同じように会社の最前線にいる人たちに対して、分かりやすく伝えられるんじゃないかと思います。

DXが新時代の企業成長のポイントになるわけですね。

「選ばれる理由」があるのに気付けていない、表に出ていない会社はたくさんあると思うんです。「選ばれる理由」が直接的に花開いてない場合は、何かのきっかけで、花が咲く可能性がある。DXがそのきっかけとなれるんじゃないかと思います。DXを最大限に利用することで、小規模の会社でも大きく飛躍できる可能性がある。DXは中小企業にとってピンチではなく、大きなチャンスといえます。

世の中はすごいスピードでどんどん変化していく。だけどそんな時代の中で、自分も変化し、変化に対応して、がんばっていきたいと前向きに考える人を、会社を、僕は全力で応援したいんです。


黒瀬直樹インタビュー

DXは中小企業にとって大きなチャンス。変わりたい企業を全力で応援します!


プロフィール:岡山ウェブコンサルティング(株)代表取締役 黒瀬直樹

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